Interview

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平成20年
機械科卒業

有限会社プロテック 歯科技工士:池田 裕樹

現在のご職業や、お仕事の内容をおしえてください。
職業は有限会社プロテックの歯科技工士です。プロテックは父親が設立した歯科技工士の会社で、入れ歯・差し歯・インプラント・矯正装置などを作る会社です。僕自身の仕事の内容は、簡単に言いますと差し歯とかインプラントの製作になります。僕たちが作る歯にも、保険が適用されるものと、保険が適用されない自費診療に別れているんです。僕は自費診療のセラミックを専門に製作しています。もちろん保険で差し歯・インプラントを入れることもできるんですが、どうしても限度が決まっていて、その範囲でしか作れないんですよね。自費診療の方がより患者さんの歯の色や形にあった綺麗な差し歯・インプラントを作ることができるんです。
僕たちの仕事って俗に言う人口造形ってよく言われるんですけど、自費診療の歯になるとより専門的になるので、形だけじゃなくて歯の構造・中身、どうやって歯ができていて、どうしてこういう形をしているのか、どうしてこういう色の発し方をしているのかっていうことを専門的に勉強しないと自費診療の仕事は成り立たない、難しいんですよね。
天然の歯と僕たちが作る歯っていうのは違うものじゃないですか。それをセラミックという材料を使って、色はもちろん機能とかもいかにうまく表現するか。何ミクロンっていう世界で狂っちゃいけないので、とても神経使いますし、本当に大変ですし難しい仕事ですね。
この仕事を目指したのは父親の影響・・・でしかないですねw 自分の父親が歯科技工士やってなかったら多分自分もなってはいないですし、その職業も知らなかったと思うんですよ。僕たちは歯科医師と連携をとって患者さんの歯を作る裏方で、患者さんと直接話せるわけじゃないですからね。僕たちの職業を知らない方も多いかもしれません。それに歯医者さんって増えてますけど、歯科技工士って年々減ってるんですね。それに資格がないと、たとえアルバイトでもこの仕事に携わることもできない。
だから『歯科技工士』っていう職業をもっといろんな人に知ってもらいたいです。
千曲高校・機械科に進学された一番の理由は何でしょうか?
もう小さい頃から漠然と「歯科技工士になるんだな」っていうのがあったんですよ。心のどこか隅にずっとあって。普通科って歯科技工士をイメージした時に繋がらなかったんですよ。歯科技工士になる過程で役に立てばいいなと思って千曲高校・機械科を選んだんです。機械科も『何かを作る』って意味では共通してるところはあるんですよね。授業では旋盤も触りましたしCADもやりました。現在もこの仕事でCADCAMを導入してやってるんですが、どういうものか理解していたので困ることはなかったですからね。
あと千曲高校は家から近かったってこともありますねw
在学中はどんな班活に在籍されていましたか?
サッカー班でしたね、3年間。サッカーって夏の大会で一旦引退になるんですが、冬の大会もあるんですよね。サッカーはその冬の大会がメインなんで、残りたい人はそこまで残ってもいいんですけど、僕は残らなかったんです。班活やってると放課後の時間ってどうしても班活に取られちゃうじゃないですか。3年生になって残りの時間は機械科の友達といろんなことしたいって思ったんですよ。それに機械科のルーム長やってたんで、文化祭の準備なんかにも専念しなきゃいけないっていうのがあったり、思い出を残したいっていう気持ちもありました。サッカーは3年間やってきたからいいやって、きっぱり辞めて、残りの高校生活をみんなと楽しみたいと思いましたねw
在学中の思い出として、忘れられないことはありますか?
思い出はたくさんありますw
まず憶えているのは、課題研究っていう授業があったんですよね。そこではいろんな班に分かれて、自分たちで何かテーマを決めて、それをみんなの前で発表するっていうものだったんです。4~5人ぐらいだったかな。僕たちは機械科だったんで「ポケバイ作ろう!」ってなったんですよ。自分たちでパイプを切って、溶接して、フレームを作って、エンジンは原付のエンジンを外して、それを作ったフレームに積んで、配線してポケバイを作ったんですよ。実際そのポケバイは走ってたんですけど、発表の2~3日前に突然動かなくなっちゃったんですよ。 「発表日に間に合わない」「どうする?どうする?」ってなって、結局最後は先生にお願いして、プロのバイク屋さんに持って行って「どうにか動かせるようにしてください!」ってw 
で、その発表って機械科と電子機械科が合同でやるんですが、みんな真面目なんですよね。紙に書いたことをしっかり発表して。僕らの班だけは違ったんです。プロジェクトXってあるじゃないですか?BGMに『地上の星』を流して、プロジェクトX風に発表したんですよw ナレーションも友達がプロジェクトX風に読んでw 「いい発表できたな」って思ったら、みんなの前で先生に「お前ら全員やり直しだ!」って言われて、「そんな風に発表したやつ誰もいねーだろ」って逆に怒られたんですよ。どんよりしたテンションでポケバイ走らせましたね。親友は「お前たちの発表が一番良かった!」って言ってくれたし、みんなは結構笑ってくれたりして、楽しんでくれたんですけどね。 まぁ、後は何も言われなかったんでやり直しませんでしたけどw

あとはやっぱり文化祭ですかね。焼きそばを屋台でやったんです。なぜかは忘れましたが、僕らの時って食べ物ダメって言われてたんですよ。食中毒かなにか忘れましたが、なにかが問題で。でも、歴代機械科って屋台で焼きそばをやってたんですよ。伝統ですし「どうしても焼きそばをやりたい!」って言ったら、なぜか僕らだけ許可が下りたんですよ!まぁ、先生が何とかしてくれたと思うんですけど。で、「焼きそばできる!」ってなったんですけど、他のクラスからは「なんでダメって言われたのに機械科はできるの?」って言われたんですw 他のクラスは諦めてジュースだけを販売したりしてましたね。作るのがダメだったんでしょうね。でも、「どうしてもやりたい!」ってことでやらせてもらったら、みんな買ってくれて、スゲー売れたんすよ! 他にやってるとこなかったからもありますが、メッチャ行列できて、僕たちの焼きそばが売り上げ1位だったんですよ!めっちゃ儲かりましたね。先輩からは「みんなで山分けして、好きなもの買えるぞ」って教えられてましたから、みんなでそのお金で何をしようか話してたんですw でも、文化祭終わったらそのお金が無くなってたんです。みんなで分けようって話だったのに、どこにあるかわからなくなって…。で、みんなに話を聞いていったら「担任の先生が全部持って行ったよ」っていう証言がありまして…。多分、売上金を分けること自体ダメだったんでしょうね。文化祭で生まれたお金ですからねw 何十万とかあったのかな…?とにかくすごく売れたんですよね!売り切れて、また仕入れに行ってやってましたからね。
千曲高校で学んだことで、今のご職業に活かされていると思うことはございますか?
やはり授業でCADに触れてきたことですね。基本的な部分は学べたと思いますし、職場にもCADCAMを導入しているのでとても役に立っています。あとはなにより『何かを作る』ということでしょうか。ゼロからひとつのものを作り上げていくという面では、機械科で学んだことも、歯科技工士としても共通する部分でもあるし、自分のベースになるものであったと思います。
当時、先生から言われたんですよね。「歯科技工士、多分向いてないよ」って。「なんで?」って思ったんですけどね。僕って製図を描いていても飽きちゃうというか、楽しくなかったんですよね。結局みんなよりも遅れていったんです。先生はそれを見て「集中力ないし、手で作業することなんて向いてないんじゃないか?」って言われたんですね。ただ、僕は製図が嫌いだっただけで、何か作ることは好きだったんですよ。 そのあと専門学校を卒業してから表彰してもらったんです。『技術賞』っていう賞をもらったんです。その賞を先生に見せに行こうと思ったんですよ。「向いてない」って言われたのが悔しくて、ずっと引っかかってたんでw 先生に認めてもらいたいと思って、賞の楯を持って行ったんです。「先生見てください。オレこの賞取ったんですよ。」その時に先生が「あの時向いてないって言って申し訳なかった」って言ってくれて、その賞をものすごく褒めてくれたんですよ。「向いてたんだな」って言ってくれたんですよ。「向いてない」って言われたことも、実は未だに引っかかってるんですけど、それがあるから頑張れることもあったり、「自分向いてるでしょ」ってバネにすることでもありますね。
これからの社会で求められるのはどのような人材ですか?
僕が思うには柔軟性のある人。やっぱり今の時代って目まぐるしく進んで、すぐに変わるじゃないですか。「昔のこのやり方でいいんだ」っていうことも決して悪いことじゃないし、伝統を守るという面ではいいんだと思うんですけど。今、歯科業界もデジタル化ってすごい進んでいて、数年前まではCADとかもなかったので、アナログから切り替えられる柔軟性を持った人、その環境に合わせていかれる人がこの先求められるのかなと思います。選択肢はたくさんありますし、いろんなことに対応していかなければいけませんからね。
ご自身が影響を受けた人・尊敬される方はおられますか?
それはもうたくさんいますね。正直、影響受けたと言えば、もちろん両親もありますし、そこから始まり友達もそうですし、先輩もそうですし、今まで出会った人というのは少なからず影響は受けてますね。確実にw
歯科業界のマニアックな話をすると、僕が東京の大学に行ってた時、実習する部屋である本を見つけたんです。その本には歯科のセラミックで作られた人工の歯の写真集だったんですよ。それを見たときにとても衝撃を受けたんです。「歯科の材料でこんなものが作れるのか!?」って、最初見たときに本当の歯だと思ったんですよ。その時まで自分の中で「できた!」って思っていた物も、その本を見て「自分が今まで作ってきた歯って全然偽物じゃん」って感じました。それは歯科技工界では世界的に有名な青嶋 仁先生の本だったんですよ。歯科技工士の免許取ったばっかりだったので、それまで全然その先生の事知らなくて、「こんな人がいるんだ」って。それから「こういうものを作りたい」ってスゲー思い始めたんです。プロテックのホームページに載ってる歯の写真は、その青嶋先生に憧れて作ったものですね。「どうしても青嶋先生に教わりたい」って思うようになって、東京の会社で働きながら、週末は先生のセミナーに通って勉強させていただきましたね。その門下生は皆さん歯科技工界で活躍されていますね。僕はまだまだ全然未熟者なんで、もっと技術を高めていきたいと思っています。
その本に出合っていなければ、そんな考えにもなっていませんし、目指すものも違っていたかもしれませんね。だから、ずっと尊敬していますよね。
大切にされているポリシー・座右の銘はありますか?
座右の銘はありますね。『継続は力なり』です。
この言葉は僕が小学生の頃に担任の先生がくれた言葉だったんですよ。色紙に書いてくれたんですが、小学生だったんでどういう意味か分からなかったんです。母親に「コレどういう意味なの?」って聞いたら、「続けることはいずれ大きな力になる」って教えてくれたんですが、その言葉があったから今まで続けてこられたってこともありますね。
『継続は力なり』って僕の中でいろんな解釈があると思ってるんですよ。【地道に続けていればいつか大成する】っていう意味もあれば、【能力がなくても続けることで力になる】とか、【継続して努力すること自体が才能である】と言っているようにも捉えられるんです。この仕事をしていると諦めたくなる時もあるんですよ。辞めたいと思ったことも何度もあります。前の会社でアメリカに2カ月間研修に行かせてもらったことがあるんですが、環境も全然違って、助けてくれる人もいなくて、かなり辛かったんです。でも、この言葉があったから「頑張ってみよう」ってもう一回思えるんですよね。
今後達成したい目標や夢はございますか?
専門的になっちゃうんですけど、患者さんひとり一人の歯の色に合わせたものを作るって本当に難しいんですよ。メチャクチャ難しいんですよ。どんなにすごい先生でも言うんですよ。そういうものを本当に作れるようになって、患者さんに喜んでもらえたらいいなぁって思います。今でも本当に難しくって、実際納得いかないことも少なくないんですよ。「もっとこうしておけばよかったな」とか後悔もあります。そういうのをちゃんと作れるようになりたい。僕個人の目標です。
在校生にお声がけいただくとしたら、どのような言葉をかけますか?
今本当に思うんですけど、昨日まで高校生だったって思うぐらい、あっという間に時間て過ぎていくんです。ついこないだまでハタチだと思っていたら、あっという間に30歳なんで。なので高校生活の3年間、とにかく楽しんでもらいたいです、本当に。「時間を無駄にするな」って言われてきましたけど、まさにその通りで、1日1日本当に楽しんでもらいたいです。工業高校なんですが、そこで何か自分が得意なものだとか、これがいいなって思えるものがあったら、本当にそれに突き進んで欲しいですね。なにか小さな光が少しでも見えて、「あ、これちょっと自分に可能性がある」と思ったらやってほしい。他の高校と違ってそういったものが見つけやすい、掴みやすい気がします。僕も本当に友達ともっと遊んでおけばよかったと思ったりしますw 高校の時にできた友達って、今でも一緒に飲みに行ったりするし、高校って社会に出ても繋がっていられる人間関係を築ける場所だと思うので大切にしてほしいですね。
令和3年1月7日公開

有限会社プロテック (上田市上田原)

HP https://protec-d.jp/