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咲きはじめた曼殊沙華

2023年09月24日
昭39機械 S.Motegi」

秋の柔らかな木洩れ日をまとい、静かに紅の蕊を揺らす曼珠沙華がそこかしこに咲きはじめました。炎暑の影響か例年より開花が遅れていると感じましたが、秋彼岸を前に咲き始め、季節の確かな移ろいを感じます。

曼珠沙華には、花の名の由来となった紅の花とともに、白い花も見られます。白い花は「白花曼珠沙華」と言いますが、この群生をかつて鎌倉の萩寺、宝戒寺で見かけました。
この宝戒寺は北条一族終焉の地としても有名ですが、源氏一門の新田義貞に攻め込まれ、北条一族ことごとく自刃して果てた地でもあります。
その後、梅に始まり、百日紅、曼殊沙華、さらには萩までがことごとく色を失くし、白色の花のみが咲くようになったと土地の古老から伺ったことがあります。
「これ以上の血潮を吸いたくないと言う、大地の叫びでもあったのではないでしょうか」と言うのが、その古老の感想でした。それが事実かどうかの検証は出来ませんが、見事に咲く白花曼殊沙華を見つめていると、そんな話も頷きたる思いがします。

なお、曼殊沙華は、サンスクリット語で「赤い花」を意味するmanjusakaの音写で、この名前は、仏典に由来し、釈迦が法華経を説かれた際に、 これを祝って天から降った花(四華)の一つが曼珠沙華であるとされています。鮮やかな赤色の花は、天上の花として仏教の象徴ともなったとの事です。
また、『万葉集』に詠われた「いちしの花」を彼岸花とする説もあります。
★路のべの壱師の花の灼然く人皆知りぬ我が恋妻は
(柿本人麻呂歌集)

また、曼殊沙華は、花が咲いた後に葉が出て、再び花が咲く頃にはその葉も消えるという特徴を持っています。
このため、花と葉が同時に見られないことから、「相思華」とも呼ばれるようになったとのことです。それは、「花は葉を思い、葉は花を思う」という意味で、別れた恋人や亡き人を慕う深い思いを表しています。
曼殊沙華は、秋の彼岸の頃に咲くことから、彼岸花とも呼ばれますが、この名前も死者や故郷を偲ぶ気持ちを含んでいると考えます。
曼殊沙華は、紅の花蕊を空に向け咲く美しい花ですが、その裏には悲しみや哀愁が隠されているようです。
この曼殊沙華に寄せて一首即興で詠んでみました。
☆ほむら立ち空向き咲くや曼殊沙華 秘むる命のたぎるが如く

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