
俳句「桜人」
「季節の便り」 2025年5月
高野 栄昭(機S38年卒)
〇 農水路沿いて桜の花の道
〇 車座で吞んで歌えの桜人
〇 待ち焦がれ桜楽しむ句会かな
〇 天気良し桜またよし句会かな
〇 皆々と今を楽しめ徒桜
〇 山々の火炎が襲う山桜
〇 桜咲く前に後ろに異邦人
「註」
七句の俳句を「季節の便り」として、桜に寄せて詠んで頂きました。
句歴の長い高野さんの感性と技巧が光る俳句です。
俳句の門外漢である私が感想等述べることは、おこがましいことですが、
少々したためさせて頂きます。
七句目の「桜咲く前に後ろに異邦人」。この句を拝見して、この句から、
グローバルな現代の花見の様子が生き生きと伝わってきました。
かつては豊臣秀吉の「醍醐の花見」に象徴される、日本の文化であった
花見が、今や国境を越えて多くの人々に親しまれている様子が、
この短い一句に凝縮されています。
「前に後ろに異邦人」のフレーズが、単なる風景描写に留まらない、
詠み手の新鮮な驚きや印象を表しているとも感じます。「異邦人」
という言葉には、カミュの小説「異邦人」とは異質な、もの珍しさや
異文化への尊敬が込められていると感じます。
花見という日本の風物詩の中で、言葉や文化の異なる人々が共に
美しいものを愛でている、その光景に作者も心を動かされたのでは
ないでしょうか。
この一句から、花見という身近な体験を通して、国際化という現代社会の
側面を捉え、それを俳句という短い詩形で見事に表現されたと考えます。
伝統的な日本の美意識と、グローバルな視点を融合した興味深い一句
だと感じました。 HP運営委員(S.M)