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―花吹雪― 横須賀走水

春彼岸を待たずに開花した桜も、弥生のつごもりに満開を迎え、卯月の初めに花吹雪を散らしています。 コロナウイルス禍の喧騒の中で春を先取りして咲いた桜も、ゆったりと眺めることも叶わなかった千鳥ヶ淵緑道をはじめ、多くの桜の名所で染井吉野、大島桜桜も含めて、いずれも見事に咲き切ったと感じます。

横須賀走水の海の畔で春爛漫を演出した艶やかな桜も、今年は外出自粛要請もあり人々の賑わいも、いまいちの状況の中で、静かに散り時を迎えていました。走水の名が知られるのは、古事記や日本書紀に登場する日本武尊の東征の物語からです。
日本武尊が走水から上総に向けて出船した際、海が荒れて船を進めることができなくなり、 これは海神の怒りによるものだと考えた后・弟橘媛が、海に身を投げ神の怒りを鎮めたとの伝説のある海辺でもあります。
なお、水源地の裏手の丘陵を挟んで走水神社があります。そこには弟橘媛の詠んだ
「さねさし相模の小野に燃ゆる火の 火中に立ちて問ひし君はも」
という歌碑が建っています。

走水で湧き水を汲みながら、細君共々桜吹雪を浴びて参りました。走水の水源地は富士山の伏流水が、遠く三浦半島まで辿り、海辺に湧き出すといったロマンあふれる伝説もあります。また、この水源は関東大震災の時にも枯れることなく、今なお1日1,000m3の供給能力を持っているとのことです。
この海辺の染井吉野、大島桜等は咲き満ちて、一斉に花吹雪のときを迎えておりました。 海辺の芝生の園を覆いうす紅に染める桜のトンネルも圧巻ですが、花吹雪が海に向かって逆巻きながら舞う様。そこには花の命が秘める情念の凄さを、今更ながら感じさせられた次第です。

その折の感慨等を織り込み、短歌に詠ってみました。なお、掲載の写真は桜の満開時を載せました。
☆ 咲き満る花も秘むるや情念の 想いのたけを散り際にみせ
☆ ゆく春の愁いとどめし花吹雪 海に向いてなおも逆巻く
☆ 走水さくら逆巻く花いかだ 憂い載せるも 寄せ浪静か
☆ 散る花を浮かべ逆巻く走水 憂いの春も つつみ連れゆく
☆ 花びらで埋め尽くさんや走水 コロナの春の記憶刻みて
☆ 花いかだ浮かべ曳きゆく走水 弟橘媛も幻にたつ

HP運営委員 S.M

横須賀 走水に咲く大島桜

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